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「もずくを核にサンゴを育て里海再生」「伝統漁法を復活させ、エコシュリンプ(エビ)を養殖」。産直で自然を再生し、地域も活性化!

目次

「安全・安心な商品が欲しい」というニーズを受け「産直(産地直送)」の人気が高まっている。米、青果、肉、牛乳などほとんどの商品が産直というパルシステム生活協同組合連合会(山本伸司理事長)は、食を通じて産地の自然環境を保全・再生する取り組みに力を入れ、農薬や化学肥料の削減など独自の基準を満たす商品を供給するとともに、地域の自然環境に配慮した環境保全型の農業、水産業などの支援を目指す。こうした活動の中から消費者の求める商品が生まれ、環境にも優しく、雇用も生まれ地域活性化にもつながっている。

自然を再生し、雇用創出で地域を活性化

サンゴを植樹する様子。ひとつずつ人の手で行われている。
サンゴを植樹する様子。ひとつずつ人の手で行われている。

色とりどりの魚が泳ぐ美しい沖縄の海で、今、温暖化による海水温の上昇、オニヒトデによる食害などの影響でサンゴ礁の荒廃が深刻化している。その改善に一役、買っているのが「もずく」だ。パルシステム生活協同組合連合会は2009年、地元漁協、村、加工メーカーとともに、沖縄県の恩納村に「恩納村美ら海(おんなそんちゅらうみ)産直協議会」を発足させ、同村産直の「恩納もずく」として販売する一方、利用代金の一部をサンゴの植え付けにあてる「サンゴの森づくりプロジェクト」をスタートさせた。

同協議会が取り組むのは、もずくの養殖場周辺の環境再生。サンゴを植え付けることで、サンゴに住む生き物や、それを食べる生き物が、多様で豊かな生態系を育まれ、そこから生まれる酸素や養分がもずくの栄養になる循環のサイクルができる。2013年度は1000本のサンゴを植え付け、累計5300本に達した。

 ジャワ島では、伝統漁法でエビを養殖

エコシュリンプは、環境改善と雇用を創出し、産業の活性化にも役立っている。
エコシュリンプは、環境改善と雇用を創出し、産業の活性化にも役立っている。

同連合会が産直提携を結んだ産地は383にも及び、国内外に広がる。天ぷらなどで人気のエビ。日本は世界でも有数のエビの消費国だが、そのほとんどを海外からの輸入に頼り、かつて、乱獲により生産量が激減。エビの供給を担っていた中国、タイなどの東南アジアの国々では、狭い池で大量に育てる集約型の養殖方法が広まった。もともと病気に弱いエビの病気を防ぐために抗生物質が投与されたり、人工飼料の残りかすによる養殖池周辺の土壌の汚染も問題になった。

こうした中で生協などが協同出資してオルター・トレード・ジャパンを設立。ジャワ島東部、スラウェシ島南部でブラックタイガーの粗放養殖の生産者との関係づくりから、養殖池の状況確認、原料の受入れ、工場内での加工、最終的な輸出までを一貫した管理を開始した。インドネシアの伝統的な「粗放養殖」により、1㎡あたり約3尾という低い密度で育てたのが「エコシュリンプ」。黒変防止剤、保水材といった薬品は一切使わず、産地で凍結した後、うまみと鮮度を保ったまま輸入される。「身がしっかりしていてプリプリの食感」「くさみがない」と組合員からも好評という。エコシュリンプの工場では約40名の従業員が働くほか、生産者(池主)、関連して雇用も生まれており、環境を守りながら、地域経済の活性化にも貢献している。

 顔が見える関係づくりに注力

生活協同組合(生協、コープ)は、非営利の共同組織。パルシステム生活協同組合連合会は首都圏を中心にした1都9県10の地域生協とパルシステム共済生活協同組合連合会の11会員が加盟する連合組織で、会員数は約141万世帯。店舗はなく、組合員から注文された商品を個人宅やグループ(共同購入)にトラックで配達する宅配を中心に事業を展開し、食品を中心としながら、本、CD、衣類など幅広いサービスを取り扱う。

食べることで、収益の一部が自然の再生に還元される「恩納もずく」。
食べることで、収益の一部が自然の再生に還元される「恩納もずく」。

設立当初から「産直と環境」にこだわるパルシステムでは、青果96%、米100%、肉90%以上(牛91%、豚94%、鶏100%)、卵100%と産直比率が高い。安全・安心な食べ物を調達するだけでなく、食と農をつないで豊かな地域社会づくりへの貢献を目指しており、沖縄・恩納村やインドネシアでのエビの養殖などはこうした取り組みの一例だ。

産直4原則として、「生産者、産地が明らかあること」「生産方法や出荷基準が明らかで生産の履歴がわかること」「環境保全型・資源循環型農業を目指していること」「生産者や組合員相互の交流ができること」の4点を定めている。同連合会が目指す産直とは、組合員、作り手との間に互いに「顔が見える関係を築くこと」という。また、組合員を現地に招き生産者との交流も実施している。安全、おいしいだけではなく、生産者のモチベーションアップ、雇用創出にもつながり、地域の活性化にもつながっている。産地の支援の方法はケースバイケース。「現地に赴き、自分の目で確認した上で、それぞれに適した支援策を検討しています」とパルシステム生活協同組合連合会・運営室の植田真仁さんは話す。

 「森の産直」もスタート

現在、力を入れるのが「森の産直」だ。木の価値を見直すとともに、持続可能な森づくりで、南都留森林組合(山梨県)と杉の間伐材を使った「積み木」、間伐材の炭の脱臭剤という二つの産直品を開発した。

現在、力を入れるのは「森の産直」。間伐材を利用して積み木、脱臭剤を開発した。
現在、力を入れるのは「森の産直」。間伐材を利用して積み木、脱臭剤を開発した。

「作る人」と「食べる人」が一緒に仕組みづくりから参加でき、食と生産地をつなぎ、互いの理解を深めあうことで、都市と農村、漁村が共に豊かで持続可能な社会を作る、そんな「産直」の取り組みが共感を呼び、広がりを見せている。組合員からは「生産地を知って商品に愛着が沸いた」、生産者からは「組合員さんとの交流は励みになる」との声も聞かれる。生産地活性化の起爆剤として、さらなる取り組みが期待される。(ライター 橋本滋)