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極力トラックを使わない取り組みで、CO2を大幅削減。1万人の女性戦力確保を進める狙いとは? ≪環境先進企業リーダーインタビュー 佐川急便≫ 

環境に対する企業の社会的責任が高まる一方、「環境」に配慮した製品やサービスを選択する消費者も増えており、環境対策は企業にとって重要な経営課題になっている。先進的な取り組みを行っている佐川急便株式会社のCSR推進部環境課課長・新井優子さん、営業部営業課課長・横山治さんに話を聞いた。

佐川急便株式会社CSR推進部環境課課長・新井優子さん
佐川急便株式会社CSR推進部環境課課長・新井さん

Q:環境活動に取り組むようになった背景を教えてください。

新井「1997年に第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP3)が京都で開催された事をきっかけに、京都に本社を置く企業として環境保全に貢献出来ないかと思い、エコプロジェクト推進委員会を立ち上げ、本格的に環境への取組みを開始しました」

Q:特にCO2の削減には力を入れられていますね。

街中で自転車や台車を押して配達するシーンを良く目にするようになった。
街中で自転車や台車を押して配達するシーンをよく目にするようになった。

新井「環境保全活動に取り組むことは企業の社会的責任として当然の事であり、当社は車を使って事業を営む企業として、地球温暖化防止の為CO2の削減に努めるのが重要だと考えております。低公害車に天然ガストラックを選定した理由は、1997年当時に、ディーゼル車を基準として比較した場合CO2、NOx、PMの排出を削減出来るのが天然ガストラックでした。また、トラックによる長距離貨物輸送を、『地球に優しく、大量輸送が可能な海運または鉄道に転換』するモーダルシフトを推進し、JR貨物様と専用の電車型特急コンテナ列車『スーパーレールカーゴ』を開発し2004年から東京と大阪を約6時間で結び、日々10トントラック56台分相当の輸送を行っております。エコ安全ドライブの活動で、アイドリングストップにおいては全国で実施しています」

Q:街中などでも、荷物を台車で運ぶシーンをよく見かけます。

新井「配達及び集荷時のトラックの使用車両を抑制するため、交通量が多く駐車スペースが少ない都心部を中心にサービスセンターを設置しています。東京、大阪、名古屋、福岡など都市部を中心にサービスセンターを344カ所(2014年3月)設置し、台車や自転車を用いた人力での集荷配達を進めてきました。これにより、トラック1500台相当の使用抑制となりました」

Q:大都市で効率的な物流を目指す「館内物流」の取り組みについてお聞かせください。

自転車や台車で運ぶようにするため、都心部ではサービスセンターの設置を進める。
自転車や台車で運ぶようにするため、都心部ではサービスセンターの設置を進める。

新井都市の再開発事業が活発化され、大都市圏では大型複合施設が増加し、納品車両による交通渋滞、排気ガス、騒音などの諸問題が発生しています。人・物・車・情報を一元管理することでそれらの問題を解決するため、館内物流の一括受託サービスを提供しており、東京ミッドタウン、東京スカイツリータウン、JR博多シティー、新静岡セノバなどで実施しています。一括納品による全体納品回数や排気ガスの削減、地域の渋滞や騒音の緩和に効果を発揮しています

Q:社有林を活用して、カーボン・オフセットにも取り組んでいるそうですね。

新井「グループ会社である佐川林業が、四国に所有している『佐川の森』では、2011年に環境省のJ-VER制度において、温室効果ガス吸収源と認定され、5612トンのオフセットクレジットを取得しました。そこで昨年当社は、東京・京都・福岡エリアの三カ所のサービスセンターで、どうしても削減できなかったCO2排出量70トンを、佐川林業が所有するJ-VERを使用し埋め合わせることにより、CO2排出量を“実質ゼロ”にしました。これにより、環境省のカーボン・オフセット制度において、物流業界で初めてとなる“カーボン・ニュートラル認証”を取得しました」

Q:そのほかにも様々な環境活動に取り組んでいるそうですね。

50haの広さを持つ社有林・高尾100年の森。森を育てる取り組みにも力を入れる。
50haの広さを持つ社有林・高尾100年の森。森を育てる取り組みにも力を入れる。

新井「当社のユニフォームの素材には、ペットボトルを再利用して作られた再生ポリエステルを使用し、エコマーク商品としての認定も受けています。2013年は約66万本(500ml)のペットボトルを再利用し、約20万9000着のユニフォームを製造しました。累計ではこれまでに700万本のペットボトルを再利用したことになります。一方、東京都八王子市の約50haの社有林『高尾100年の森』では市民、大学、NPOやボランティアの方たちと協力して、里山再生に取り組んでいます。また、これまで社内で自然環境やエコをテーマに絵日記コンクールを実施してきましたが、2014年度はエコ絵画コンクールとして広く一般の方々からも公募することにしました。テーマは『大切にしたい、ぼくたち、わたしたちの地球』で、環境大臣賞作品は当社のトラックにラッピングされ来春、全国を走る予定です」

Q:今後、1万人の女性戦力を確保するそうですね。

佐川急便では今後、女性の活用を積極的に進めていく。
佐川急便では今後、女性の活用を積極的に進めていく。

横山「インターネット通販の市場が拡大していることから、戦力を増強する必要がありました。一方で働きたいけれども、子育てや家事があってフルタイムで働くのは難しい…という子育て中の主婦層のニーズがありました。人あたりの柔らかさや、気配りができる、こうした面でも女性の能力が優れていると考え、今期は5000人を業務委託で採用する計画です。今期の結果次第ではありますが、状況に応じてさらに業務委託契約人数を増やしていければと考えています。午前中の配達が基本ですが、時間帯サービス以外のお荷物であれば、ご自身の都合に合わせて配達していただければ問題ありません。軽い荷物が多く、配達するのは近所なので、自転車で回わることもでき、車の免許を取得していない方も活躍できます。当社は環境対策から台車や自転車での配達を進めているように、配達エリアをより細かい面に区切って展開を進めていく中で、女性の戦力が欠かせません。当社の仕事は力を使う=男性が働くというイメージが強いかもしれませんが、今では女性が活躍できる会社になりました。今後さらに働きやすい職場環境の構築するため、制度などの整備も進めていきたいと考えています」

Q:環境対策について、課題と今後の抱負を聞かせてください。

新井「全従業員の更なる環境意識を高めて行く事が今の課題です。社内では1年間の環境の取組みを応募する環境モデル店コンクールなども行っております。今後はこれまで行ってきた活動について消費者の方にもっと知っていただきたいですし、消費者の方やスタッフから出た意見やアイデアをもとに環境に優しい商品やサービスを創っていく、そんな活動につなげていければと考えています」(ライター 橋本滋)