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- 1 梅雨のシーズン、街ゆく人たちの間でも長靴を使う人が増えているが、こうした中で今、公益財団法人・日本野鳥の会(東京都品川区、柳生博会長)が企画・販売するオリジナル長靴がオシャレと評判になり、現在、商品・サイズによっては2週間から1カ月待ちという人気商品になっている。
- 2 「日本野鳥の会の長靴」の“ブランド”で浸透
- 3 日本野鳥の会は、野鳥やその生息地を守る活動に取り組む、全国90支部、約5万人の会員・サポーターを有する自然保護団体。この長靴は野鳥観察の愛好家向けに企画・開発した商品だが、今では商品を購入して「初めて野鳥の会の存在を知った」という人もいるほどで、本来とは別目的で購入するユーザーが多く占めるようになった。2004年の発売以来、10年かけて口コミを中心にジワジワ広がり、現在ではオフィスに通勤するOLなど30代の女性の他、男女年齢問わず幅広い層から支持を集め、「日本野鳥の会の長靴」として広く浸透するようになった。
- 4 人気のきっかけは、音楽イベント・フジロックフェスティバル(野外コンサート)に行く人たちの間で、雨が降ったときの対策や、飛んだり、跳ねたりするといった動きやすさが評判になったことだった。その後、モデルが履いたり、女性ファッション誌などでも取り上げられたこともあって、ブーツ感覚で買い求める女性が急増。通勤やカジュアルでも合わせやすく、履きやすさや一足5000円前後というリーズナブルな価格も人気を後押ししたという。
- 5 「田植え長靴」を参考に開発。独特のぴったりフィット感が人気
- 6 もともとは、バードウォッチングの際、干潟やぬかるみなどを歩くことを想定し、田んぼなどの農業作業に使う「田植え長靴」を参考に企画・開発したため、足首部分が柔らかいので、腰を前にかがめる動作がしやすく、作業のしやすさに優れている。足、ふくらはぎまで全体をぴったり包み込むようなフィット感があり、抜けにくい。また、かかと部に突起があるので、ここを足で踏むことで手を使わずに簡単に脱げるようにしたり、折りたたんでデイパックに入れることを想定しているため軽いのも特長。こうした機能性の高さが口コミで広がり、子どもの迎えに使う主婦やガーデニングなど様々な用途で利用されるようになった。また、近年の豪雨や都内でも記録的な積雪も需要増に拍車をかけたという。
- 7 反響の大きさに企画者も驚き
- 8 日本野鳥の会では長靴の他にも、野鳥観察時でも図鑑のページをめくりやすいグローブや、消臭機能付きのタオルなどアウトドアに役立つグッズや本などを販売し、その収益を野鳥の保護活動に役立てている。こうしたグッズの企画・開発を手掛けるのが普及室販売出版グループの高瀬さんら6名のメンバーだが、もともとは現場で自然保護に直接たずさわるレンジャー出身者が主。「こんなのがあったらいいんじゃない?という感じで意見を出しながらやっているので、予想外の反響の大きさと、当初想定した以外の使われ方で利用されているのを知り驚いています。野鳥に興味がなかった方も商品購入をきっかけに、野鳥の会の活動を知っていただくきっかけになればうれしいです」と高瀬さんは話す。
- 9 今年は日本野鳥の会が創立80周年を迎えたのを機に「日本の野鳥」をテーマにイラストを公募し、オリジナルデザインTシャツを企画するなど、新しい企画やコラボにも積極的に取り組んでおり、今後も人気商品の誕生が期待できそうだ。長靴は男女兼用で、色はカモフラージュ、グリーン、メジロ、ブラウンの4色。商品は日本野鳥の会本部の直営店(東京都品川区)、ネット通販の他、アウトドアショップ、雑貨店等で販売している。使用目的によって厚手の靴下などを履く場合は、実際のサイズより1センチ程度上のものがいいそうで、試着してからの購入を勧めているという。販売店の詳細は同会のホームページで。(ライター 橋本滋)