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福島発のソーシャルビジネスを世界へ!再生可能エネ、食、観光など、新ビジネスの芽

ソーシャルビジネスで起業続々。一方で人材、モチベーション面で悩みも

いわきのさびれたシャッタースナック街をリノベーションした夜明け市場。最初は2店から始まり、現在11店舗に拡大した。
いわきのさびれたシャッタースナック街をリノベーションした夜明け市場。最初は2店から始まり、現在11店舗に拡大した。

東北大震災で多くの産業が被害を受けた被災地の福島で今、ソーシャルビジネスを立ち上げようという気運が高まっている。撒いた種は、再生可能エネルギー、観光、食、ITなどの分野で小さな芽が出始めている。

 

 

右腕派遣プログラムには全国から190人が参加

スキルを持つ人を全国から募集し、復興支援の事業・プロジェクトに派遣する右腕派遣プログラムは、いわば海外青年協力隊の国内版。これまで117のプロジェクトに190人を超える人が参加した。

右腕派遣プログラム終了後も、そのうちの6割の人が東北で就業、起業といった形で地元に残り、人材面の活性化にもつながっている。「大手企業を退職して、プログラムに参加してくれた人もいる。福島は今、難局を乗り越えようという想い持つ人が全国から集まる場所であり、新しいビジネスがどんどん生まれる可能性を持つ場所になっている」と同プログラムを行う特定非営利法人ETIC(エティック)代表理事の宮城治男さんは言う。

福島の課題を解決するための情報収集、情報発信を行っているふくしま会議は、東京・丸の内でふくしま会議inTokyoを開き、ふくしま発のソーシャルビジネスとして、再生可能エネルギーに取り組む会津電力、食品メーカー・五十嵐製麺の取り組みを紹介した。

「エネルギーの地産地消を実現したい」と語る会津電力社長の佐藤さん。
「エネルギーの地産地消を実現したい」と語る会津電力社長の佐藤さん。

会津電力は、原子力に依存しない安全で持続可能な社会作りと、会津地域のエネルギー自立を目指し、2013年8月に設立された福島県会津に本社を置く地元の電力会社。福島は水力発電が豊富で、その容量は原発5基分の500万キロワットに相当。将来的には現在の保有者・東京電力から水力発電所を買い取ることも念頭に入れる。また、喜多方市には太陽光発電による発電容量1メガ(1千キロ)ワットのメガソーラーを建設する他、小水力発電を20カ所以上に設置、森林資源を活用したバイオマス発電にも取り組んでいく計画だ。

「もともと、福島は水も食糧も豊富。エネルギーも自給することで、本当の意味で地域が自立できる」と社長の佐藤弥右衛門さんは言う。目指すのは「会津の地で電気の地産地消」で10年後、売上1000億円以上を目指している。土湯温泉(福島県)では温泉熱を利用したバイナリー発電も行われ、観光客向けに地熱エネルギーの体験ツアーなども行われ、再生エネルギー先進地として知名度も高まりつつある。

五十嵐製麺が開発した新商品「スピルリナ・サラシア麺」を使った料理。
五十嵐製麺が開発した新商品「スピルリナ・サラシア麺」を使った料理。

五十嵐製麺が開発した新商品は「スピルリナ・サラシア麺」。健康指向に着目し、大麦で作った麺に、高タンパクのスピルリナ、糖の吸収を抑える効果があるというサラシアを練り込んだ。世界的に糖尿病患者が増えている中で、健康に気をつかう人などの需要を見込む。スピルリナはもともとアフリカ原産の藻の一種。社長気付室長の五十嵐幸介さんは、「流通の仕組みなどの工夫によりコストを抑え、生産地にも還元できるビジネスにしていきたい」と社会貢献にも注力する。

今、なぜ、福島でソーシャルビジネスなのか?

こうした新しい事業に取り組む企業がある一方、もともと東北は基幹となる産業は少なく、中小企業が多かった。保守的な土地柄もあって、新しいビジネスの立ち上げは簡単ではない。支援のムードが高まる一方、震災から3年以上が経過したが、厳しい復興の道のりに住民の気運もなかなか高まらない。挫折と試行錯誤を繰り返しながら模索を続ける支援側も、軌道に乗らない現実にもどかしさも感じているようだ。

パネルディスカッションでは、識者から福島のソーシャルビジネスの将来性に期待する声が多く出た。
パネルディスカッションでは、識者から福島のソーシャルビジネスの将来性に期待する声が多く出た。

「震災からしばらく経っても、住民一人ひとりでもそれぞれ異なる考えや思いがあった。隣の人が何を考えているのか分からない中で、自分の意見をいう雰囲気ではなく、重苦しい空気だった。そんな中で大臣の『金目でしょ』発言が起き、人々の心はまた傷ついた。こうした発言ひとつで人の心が引き裂かれ、人々が分断される。震災から3年以上が経過する今も住民からの声がなかなか聞こえてこない」とふくしま会議・代表理事の赤坂憲雄さん(学習院大学教授、福島県立博物館館長)は言う。

これまで様々なビジネスに取り組んできたが、成功事例は多いとは言えず、加えて地域の反応も今ひとつの状態が続いているという。こうした中でなぜ今、ソーシャルビジネスなのか。「福島が以前に戻ることが出来ず、新しいものを創るしかないからであり、それは世界で認められるものを作らなければいけないということでもある。困難ではあるが、その分可能性も大きい。失敗の連続でめげることも少なくないが、諦めないかぎり、失敗ではない」と赤坂さんは前向きだ。

高齢化、過疎に悩む地方は全国にある。生まれた産業、アイデアの芽は多くの地域に参考になるに違いない。一から始めなければならない福島だからこそ、大きな可能性がある。福島発のソーシャルビジネスの今後が注目される。(ライター 橋本滋)