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バナナの茎を紙に再生。「地球環境問題や社会問題の改善につなげたい」 ”Made with Japan”で創るソーシャルビジネス

ザンビアで雇用を創出、貧困改善に取り組む女性の挑戦

アフリカのザンビアで廃棄されるバナナの茎を利用して紙にし、名刺などのバナナペーパーを使った製品を開発、販売するのが、ワンプラネットカフェ(東京都港区)の代表・エクベリ聡子さんだ。


ザンビアでバナナペーパー事業に取り組むエクベリ聡子さん(中央)
ザンビアでバナナペーパー事業に取り組むエクベリ聡子さん(中央)

 

先進国では毎日、大量の紙が消費されている。その主原料の9割は「木」が使われ、世界では毎年日本の面積の3分の1ほどの森が失われていると言う。一方、世界120カ国以上で栽培されるバナナは収穫する際、古い茎を切る必要があり、切ったは1年以内に再生し新しい果実をつける。

「貧困や地球環境問題の改善につながる活動をしたい」と考えていた聡子さんは、オーガニックバナナ畑で捨てられていた茎から繊維(ファイバー)を取り出し、日本の和紙工場で古紙を加えて品質の高い紙に加工するアイデアを思いつき、夫のペオ・エクベリさん、現地の協力者と共にバナナペーパービジネスを立ち上げた。

「一本の木も切らず、地球環境問題と貧困を解決し、先進国でも使うことができる質の高い紙をつくりたい」という想いでザンビアと日本両国を奔走。現在、国内12社の紙製品メーカーや印刷会社と一緒にワンプラネット・ペーパー協議会を作り、名刺、ラベル、シール、証書、カードなどの商品を開発。順調に業績を拡大させ、現地の雇用にも貢献している。貧しい人たちが密漁や違法伐採に手を染めることを防ぐなど地球環境問題、貧困問題のみならず、日本の失業問題にも貢献している。バナナペーパービジネスを引っ張る聡子さんに話を聞いた。

――プロジェクトに携わるようになったきっかけを教えてください。

「以前はコンサルティング会社で環境やCSRについての企業の戦略づくりや教育、社会人向けの大学院修士課程のカリキュラム構築などに携わっていました。以前からアフリカや野生動物に関心があり2006年、夏休みを利用してザンビアを旅行しました。

絶滅が心配されている野生のゾウやカバ、ライオンなどが自然の中で生息している光景を見てとても感動しました。また、動物や自然を案内してくれるガイドは倫理ガイドの資格を持っていて、動物だけでなく生態系や人間による被害や影響などについて詳しく話を聞かせてもらい感銘を受けました。

一方、国立公園から少し離れた村を訪問すると人々の生活はとても厳しく、貧しさが原因で密猟や木材の違法伐採などが横行していることを知りショックを受けました。この村で実際に起きている様々な事実を目の当たりにしたことで、村の人たちの貧困問題を減らし、それが地球環境問題や社会問題の改善につながる活動をしたいと思うようになりました」

――思いきった決断でしたね。バナナペーパーの事業を始めたのはどうしてですか?

「ザンビアの農村部の暮らしは貧しく、不安定な環境が日常である生活を送っている人たちに比べると、日本や先進国に住む私たちはとても恵まれていると思います。日本では誰もが当たり前に教育を受けることができ、食料や水、就労機会も基本的にあり、病院や安心して暮らすことができる住まいもあります。そのような恵まれた環境にいる私たちが、途上国の人たち一緒にこれからの持続可能な発展の形を作っていくことは大きな責任であり、素晴らしい可能性でもあるという想いが後押ししたのだと思います。

バナナからとった繊維を干すザンビアの女性。
バナナからとった繊維を干すザンビアの女性。

とは言え、始めは困難の連続でした。まずは、大人の教育を促進し、職業スキルが身につくようにと、2007年に秋葉原で調達した中古のパソコン2台を村に持ち込み、パソコン教室を始めました。最低限の運営費は授業料でカバーし、村の人たちの自立にもつながるよう教室は有料で行いました。

パソコン教室は人気になり事業としても順調に進んでいましたが数年後、別の国際協力団体がパソコン教室を無料で始め、村の人たちは皆そちらに流れていってしまいました。色々と悩んだ末、それならばパソコン教室、職業スキルの向上などはボランティア団体に任せ、自分たちは直接村に雇用を生み出すことをしよう、と決めました。

ザンビアの素晴らしい自然と野生動物の世界を守り、周辺に住む村の人たちがより健康的で豊かに暮らせるようになること、そして貧困問題において雇用づくりはとても重要ですが、何より地元の環境破壊につながらないことが大切です。そこで、それまで捨てられていたバナナの茎から繊維を取り出して、日本で高品質の紙にするというアイデアを思いつきました。私たちは地元でオーガニックに栽培されているバナナ畑から、通常廃棄されているバナナの茎を買い取り活用しています。現在、ザンビアで栽培されているオーガニックのバナナの茎から取れる繊維を利用し、バナナペーパーづくりを行っています。環境にも人にも優しいビジネスです」

――現地では雇用が生まれ、とても喜ばれているそうですね。

バナナペーパーで作られた名刺。
バナナペーパーで作られた名刺。

「バナナの茎からとった繊維を日本(福井県越前市)へ送り、和紙技術を使った質の高い紙を作ってもらっています。日本では12社の紙製品メーカーや印刷会社と一緒にワンプラネット・ペーパー協議会を作り、名刺、ラベル、シール、証書、カードなどの商品開発に取り組んでいます。現地では19人を雇用するまでになりました。アフリカでは1人の収入で約10人を支えている、と言われます。私たちは19人の雇用やバナナ農家との取引をしているため、約250人の生活を間接的に支えていることになり、貧しい人たちが密猟や違法伐採を防ぐことにもつながっています。

また、現在、日本の面積の約1/3の森林が毎年世界から失われており、その一部は紙の生産に使われています。新興国、途上国の現状を考えると、今後ますます森林減少のスピードは加速するでしょう。より広い視点で言えば、私たちは活動の根本として持続可能な社会の実現を目指していますが、そうした意味でもバナナペーパービジネスの意義は大きいと思います。環境と社会的な価値をより明確に、客観的に社会に発信していくため、第三者認証のフェアトレード認証の取得を目指しています」

――“Made with Japanを提案されているのだとか。

バナナペーパーの事業を通じて実感しているのは、世界には活用されないまま廃棄されている資源があること、そして日本にはこういった資源を無駄なく活用し新しい価値を生み出す技術がたくさん埋もれていることです。

日本は鎖国の時代、戦前、戦後、そしてそこからの高度経済成長を経験しました。それぞれの時代に生まれた技術の幅が、他の国にはないほど広いことに驚かされます。特に関心があるのは、自然との調和の中で生み出された日本の技術と知恵で、これは新興国、途上国で活かせるものがたくさんあります。途上国では大きな設備投資が難しいことが多く、その他にも人材のスキルなど様々な制約条件があり、また、その様な環境でも人と経済発展のレベルに応じた技術ソリューションが出せるのも日本の強みだと思います。

途上国にあるリソースを活かしながら、日本の技術を使って持続可能なモノづくり、サービスづくりを行っていく、という意味を込めて“Made with Japan”を提案しています。世界の持続可能性(サステナビリティ)を高め、新しい時代にあったエキサイティングな商品やサービスを生み出す可能性はまだまだたくさんあるはずです。今後もさらに日本の資源を無駄なく活用し、新しい価値を生み出す”Made with Japan”に取り組んでいきたいと思っています」(ライター 橋本滋)