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夏目前。「電気の見える化」で節電対策に取り組む企業急増中。10%~15%の電気の節約も夢ではない!?

目次

空調などの利用により電気の使用量が増える夏を前に、企業の間で節電への関心が高まっている節電で電気料金が下がれば収益を得たのと同じだ。こうした中で「電気の見える化」が注目を集めている。

ニコちゃんの表情で、電気の使用状況が一目でわかる。日本テクノのスマートメーターエリア。
ニコちゃんの表情で、電気の使用状況が一目でわかる。日本テクノのスマートメーターエリア。

 企業経営者ら、節電に高い関心続く

「既存設備での節電を実施(64.7%)」「設備や照明などを省エネ型の更新(40.8%)」(電気料金値上げが業績に対して「影響あり」と回答した企業の内訳、帝国データバンク調べ)と節電に高い関心を示しているのがうかがわれる。

 「当社の事業である合成樹脂成形加工では、コストのうち電気代が多くを占めます。工作機械などを省エネタイプのものに変更したときなどが、削減効果はもっとも大きいですが、使っていない電気をオフにするなど、こまめな節電も大事です。その上で『電気に見える化』はとても有効でした」と話すのは東新プラスチック(東京都八王子市)の高橋誠社長

昨年8月、新社屋、工場が完成し、屋根にはソーラーパネルを設置、社内の照明をすべてLEDに変えるなど新しく生まれ変わった。それまでも同社長は省エネ対策に熱心で、これまで工場内部の温度を下げるため、ビニールハウスなどで使われる遮光遮熱シートを工場の屋根に張ったり、工場内を涼しくさせるためミストを発生させる扇風機を手作りで作ったことも。こうした節電対策で効果を発揮したのが、「電気の見える化」だった。

「時計を見れば、今電気を使いすぎているかどうかが一目で分かり、社員全員が意識するようになったのも大きかった」と話す。現在は社内の照明をLEDに変えたり、太陽光発電による売電により月に12万~16万円の収益があるという。もはや節電は競争力を維持する上で欠かせない課題と言っても過言ではなさそうだ。

ソーラーパネルの設置をはじめ、省エネを進めた東新プラスチックの新社屋と工場。
ソーラーパネルの設置をはじめ、省エネを進めた東新プラスチックの新社屋と工場。

 まず、ピークを抑えることが大事

 電気料金は、基本料金+電力料金+消費税+再生可能エネルギー発電促進賦課金で構成される。「電気の見える化」を行っている日本テクノ(東京都新宿区、馬本英一社長)広報室室長の中山さんは電気料金を下げるポイントとして、「過去1年間の中で各月の最大需要電力のうち、最も大きい値が『契約電力』になります。基本料金は使用量によって決まるので、まずピーク(高さ)を抑え、平均的に使用量を保つことが費用を抑えるコツです」とアドバイスする。

そして、次の課題になるのが全体の使用電力の削減。しかし、無理な我慢を強いる節電は長く続かない。同社が開発した「スマートメーターエリア」は、モニターで電力の使用状況を数値とニコちゃんの表情と色で5段階に表示できる。さらに、時計で電力の使用状況を「見える化」したのが「スマートクロック」だ。文字盤の周りに配置したLEDで使用量を色で知らせる時計で、こちらも電気を使いすぎたときは赤で表示される。誰もが理解でき、省エネ行動へのつながりやすさ、省エネ意識を高める点でも効果を発揮するという。

文字盤の周りのLEDで電気の使用状況を知らせるスマートクロック。
文字盤の周りのLEDで電気の使用状況を知らせるスマートクロック。

こまめな節電、社員の意識を高める上で効果を発揮

 同社は高圧変電設備の24時間保安管理を手掛けており、利用企業の省エネ対策の計画の立案、アドバイスから実行までサポートまで一貫サービスを提供する。

インターネットを介し電力の使用状況をPCやスマートフォンで閲覧、分析できるサービスでは、電気の使用量を30分単位で表示。新たに取り組んだ省エネ活動も「見える化」でき、分析、検証を繰り返すことで設備の稼働状況や効率が把握でき、次の対策や省エネ行動を立案したり、取り組みやすくなるという。

また、半年に1回企業を訪問し、運用面でのアドバイスを行っている。空調を一斉に立ち上げると電力を多く消費するので、順番に立ち上げていくことなど提案するといったように、既存設備の省エネを徹底した上で、次の段階としてLEDや省エネタイプの設備の導入などを進めていくという。

「電気の見える化」は、社員の節電意識を高めるのにも一役買っている。
「電気の見える化」は、社員の節電意識の向上にも一役買っている。

 「見える化しただけでは『そうなんだ』ということで終わってしまいますが、弊社では省エネ行動につなげる『理解(わか)る化』することに注力しています。今、電気を使い過ぎているから、照明を消そうとか、空調を低めに設定しようなど社員の省エネ共有意識を高め、行動を促すようにつなげていくことが大切です」と中山さんはいう。

同社ではこれまでの事例をまとめ、ホームページ「省エネの達人http://eco-tatsujin.jp/」で紹介している。アイデアと工夫で10%~15%の節電を実現した企業の事例が多数紹介されている。節電対策の参考にしてみてはいかがだろうか。(ライター 橋本滋)